最高裁判所第三小法廷 平成10年(受)407号 判決 1999年11月30日
上告人
河内信用組合
右代表者清算人
吉岡一彦
右訴訟代理人弁護士
大江洋一
被上告人
信用組合関西興銀
右代表者代表理事
李勝載
右訴訟代理人弁護士
曽我乙彦
同
中澤洋央兒
同
荒川雄次
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大江洋一の上告受理申立て理由について
本件は、土地の買戻特約付売買において買戻権が行使されたことにより買主が取得した買戻代金債権について、買主から右土地につき根抵当権の設定を受け、その旨の登記を経由した被上告人が物上代位権の行使として差押えと買主の債権者である上告人が右登記の後にした差押えとが競合し、供託された買戻代金の配当手続において、被上告人による差押えが優先するとして配当表が作成されたため、上告人が、被上告人に対し、買戻しにより右根抵当権が消滅したことを理由に買戻代金債権に対する物上代位権の行使は許されないと主張して、右配当表の変更を求めている事案であり、右物上代位権の行使の可否が争点となっている。
買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。けだし、買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は、買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが、抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては、買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはないと解すべきであり、また、買戻代金は、実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ、目的不動産の価値変形物として、民法三七二条により準用される三〇四条にいう目的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えないからである。
以上と同旨に帰する原審の判断は是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官元原利文 裁判官千種秀夫 裁判官金谷利廣 裁判官奥田昌道)